レーベルのこと

 レーベルを作ろうと思ったのは本当に些細なことから。新たなディストリビューターからストリーミング配信をしようと手続きしている時に、「レーベル」欄があったのがきっかけ。なんとなく、レーベルの名前がついてるとかっこいいよなーと以前から思っていて、ちょうどいいタイミングだし何か自主レーベル作ったら楽しいかな、というくらいの感じで。

 narekaという名義で活動するようになって、主にロイヤリティフリーという形で「使ってもらえる」ような形でお届けしてきた。私が作る楽曲は歌ではなくてインストなので、「リスニング」だけしてもらえるイメージが私には湧かなくて、元々Web制作などをしていたこともあって、何か素材的に使ってもらうようなイメージの方が湧きやすかった。

 でも、「こういうシーンにはこういう音楽」と思って作っているわけでもなくて、自分の中ではある意味一つ一つを作品のように作っていて。だったら、もうちょっと作品寄りなパッケージがあってもいいのかな、と昨年の終わり頃から思っていた。ただ、同じ人間が作った作品でも、そのパッケージの仕方、お届けの仕方が違うものが同じように並んでいると、どこかわかりにくさがあると思う。かといって、自分が作ったものを名義を変えて出せるほど器用でもなく。それで、レーベルのように何かグルーピングを加えることで、自分にとっても、聞いてくださる方にとってもどこかわかりやすくなったらいいな、と思ってこういう形を取ることにした。

 レーベルの名はFragmental Opus。元々、今この記事を書いている、ブログのような場所を「Fragment」という名前にしていろいろ残していこうと思って(実際にはあんまりできていなかったりもするのだけれど)、それは断片とか切れ端のようなものでも残していけたらいいなと思って、この名前をつけた。レーベルから出すものは、そういう断片を集めてひとつの作品のような形にできたらいいなと思って、Fragmental Opusという名前にした。私は、曲を作る時も、初めは即興でなんとなく弾いたスケッチとか、DAWで鳴らした音のイメージからコードを弾いたりだとか、そういう断片から作り始めることが多くて、自分の作り方はそういうスタイルなんだな、とこのところ思うようになってきた。

 また、せっかくレーベルを作ったので、以前からやりたかった直販ストアでの販売も始めることにした。楽曲を販売するだけでもいいのだけれど、ストリーミングで配信しているものをわざわざダウンロードして買っていただくためには、何か一緒にお届けするものがあった方がいいのではと思い、私が自分で作れるものはなんだろうと考えた。

 私は、楽曲を作っている只中にはあまり頭にイメージとかそういうものは湧いていなくて、とにかく判断の連続というか、「いま入れようとしているこの音はアリかナシか」みたいなジャッジを頭の中でしてばかりなのだけれど、ようやく完成して何かしらの形で発表する段階になると、自分の外側にある楽曲を聴くときのように、聴きながらイメージが湧いたり理解が深まって、自分が作った曲なのに新たな発見が生まれてくる。

 今回は、そういう理解や発見を深めて、楽曲をイメージするような詩を作ってみた。それに加えて、どうやって制作したかなどを振り返ったりテキストを入れることにした。これは表現上インタビュー形式になってるけれど、誰かに話を聞いていただいたのではなく、実際は一人インタビュー。自問自答(笑)。その方が書きやすかったし、読みやすかったので。

 あと、楽譜も、本当に簡易的なのだけれど、コードと主旋律と楽曲の構成がわかるようなものを作ってみた。おまけで、楽曲に使ったプラグインの一覧も。見てよろこんでくださる方がいるかわからないし、本来なら人にお願いした方がいいものもたくさんあるのはわかっているのだけれど、今回は自分でできるものを、ひとりで作ってみた。ついでに、ティザー動画も作った。

 こうして一人で作っているのは、生産性とかそういう意味において課題はあると思う。けれど、純粋に楽しいし、自分が表現したいものが形になるのはうれしい。そうやって作ったものをもし楽しんでくださる方がいらっしゃるのなら、それを手に取っていただける場があってこそだと思う。それがこのレーベルを作った意味なのかな、と、準備しながら意義が固まってきたところ。とりあえず、まずは、自分でできる範囲で形にしてみた。これから、このレーベルという形が少しずつ育っていけばいいな、と思っている。そんなこんなで、これからもあれこれお届けしていきたい。